2016年に公開されて以来、異例のロングラン上映を続けているアニメ映画「この世界の片隅に」に、約30分の新規映像を加えた新バージョン「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」が、12月20日に公開されることが決まった。29日、東京都内で開かれたイベントで発表された。
【写真特集】「この世界の片隅に:舞台を巡る
「この世界の片隅に」異例の2年ロングラン 聖地も誕生
新バージョンでは、主人公すずと遊郭で働くリンの交流など、主に1944年秋から45年春までを舞台にしたエピソードが追加される。2018年12月に公開予定だったが、「当初の想定以上に制作に時間を要している」(製作委員会)として、公開延期が発表されていた。すずの声を担当するのんら、主要キャストは引き続き続投する。
イベントで公開日を告知した片渕須直監督は「お待たせすることになり申し訳ない」と陳謝した上で、映画の冒頭がクリスマスの準備でにぎわう街並みから始まることに触れ「戦争映画というと8月とされてしまいがちだが、戦争は8月だけではない。この映画はずっと続く毎日として捉えてもらいたく、年末からお正月にかけて世代を超えて話題にしてもらいたい」と公開時期をあえて冬にした意図を説明した。
また、「この世界の片隅に」ではインターネット上で資金を募るクラウドファンディングの参加者の名前が映画エンドロールに載った。新バージョンの「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」では、映画をPRする応援チームの参加者を有料で募り、参加者の名前をエンドロールに記載予定だという。
「この世界の片隅に」は、広島県出身のこうの史代さんの同名漫画(双葉社刊)が原作。戦時中に広島市から呉市へ嫁いだ、絵を描くのが好きな主婦すずの暮らしを追う。片渕監督が入念な現地取材と時代考証を重ね、戦時下の日常や失われた街並みを丁寧に描いた。最初は小規模な劇場数での公開だったが、口コミで人気が広がり、第40回日本アカデミー賞最優秀アニメーション作品賞や第90回キネマ旬報日本映画ベスト・テン1位になるなど大きな反響があった。(加藤勇介)