社会人覇者をねじ伏せる学生王者はもう出てこないのか――。アメリカンフットボールの日本選手権・プルデンシャル生命杯ライスボウル(3日、東京ドーム)で、3連覇を狙う富士通に17年ぶりの頂点をめざす関学大が挑む。関学大は2015年の初対戦から2連敗。三度目の正直なるか。
悪質タックル被害を乗り越えMVP 関学大QBの奥野
DA PUMP、Xボウルでアメフト版「U.S.A.」
富士通が3連覇 アメフト・ジャパンXボウル
1勝9敗。
ライスボウルで社会人に挑んだ学生の過去10年の対戦成績だ。近年はQBなどに外国人選手を起用する社会人チームが増加。レベルの差は広がった。けがの危険性もあり、対決を見直す機運は高まってきている。
ただ、富士通の藤田ヘッドコーチ(HC)は関学大について、こう言った。「実力差をひっくり返すことのできるチーム」
「規格外の選手」どう動く
関学大の強さを形容する時、組織力という言葉が使われる。各ポジションの優秀なコーチの下で選手と分析班が一体となってゲームプランを考え、遂行する。他をしのぐのはそのプレーの緻密(ちみつ)さと完成度にある。
例えば早大と対戦した昨年12月の甲子園ボウル(全日本大学選手権決勝)。第2クオーター(Q)、DL板敷が早大パントをブロック。ゴール前1ヤードで攻撃権を得て得点につなげた。分析で相手の癖を探し、練習ではブロックする手の出し方まで追求した結果だ。
攻撃では精度の高さを生かしている。立命大と対戦した西日本代表決定戦。第4Q、残り1分56秒からQB奥野がWR松井、阿部にパスを決めて逆転FGを演出した。時間を極力使わずに得点を狙うこの「ツーミニッツ(2分間)攻撃」にこそ、タイミングやブロックなど細部までこだわってきた成果が表れた。藤田HCはその怖さを身に染みて知っている。関学大が初優勝した02年大会で、敗れたアサヒ飲料の指揮官は藤田HCだった。
今回、関学大は「規格外の選手がたくさんいる」(関学大・鳥内監督)富士通にどう挑むのか。守備は社会人決勝で196ヤードを走った身長186センチ、体重106キロの大型RBニクソンにズルズル進まれても、何とか一発TDだけは避けたい。自慢のパス攻撃を展開するには、鋭い出足でQBに襲いかかってくるLBマシス、趙らを食い止められるかにかかっている。スペシャルプレーの成功もカギを握る。平成最後のライスボウルは、細部にこだわる関学大の総力をかけた戦いとなる。(榊原一生)