三が日のくらしを突然、強い揺れが襲った。熊本県和水(なごみ)町で最大震度6弱となるなど九州の広い範囲で観測された3日の地震。大きな被害は確認されていないが、Uターンラッシュで混雑する交通網は大きく混乱した。
JR九州は地震後、九州新幹線の博多―熊本駅間で上下線とも終日運転を見合わせた。緊急停車した2本が線路上で立ち往生し、乗客が閉じ込められた。
博多発熊本行き「つばめ333号」(乗客約130人)は、約4時間後の午後10時半ごろ、最寄りの新玉名駅(熊本県玉名市)に徐行運転で到着。その後、熊本発博多行きの「つばめ338号」(同約150人)も同駅に着いた。足止めされていた乗客は代替輸送のバスに乗り込み熊本と博多方面にそれぞれ向かった。
333号で愛知県豊橋市から玉名市の祖母宅へ両親ら家族5人で向かっていた主婦の鈴木美穂さん(32)は「やっと着けた。お茶しか飲んでいなくておなかがすいた」。地震は周囲で鳴り始めた携帯の緊急地震速報で知った。乗客は落ち着いた様子だったという。
福岡県小郡市の実家から単身赴任先の熊本市に戻る途中だった会社員の鎌田敏さん(64)は「駅に着く直前に車内の電気がゆっくりと消え、列車が止まった。特に揺れは感じなかった。取引先などに被害がないか心配です」と話した。
338号が新玉名駅に到着したのは4日午前0時過ぎ。熊本市南区の実家に帰省していた会社員の古舘幸治さん(69)は「熊本駅を出てまもなく、トンネルの中で周囲の携帯(緊急地震速報)が鳴り始め、急ブレーキがかかった。初めは事故かなと思った」。動き出すまでずっとトンネル内に止まっていたが、乗客はみな落ち着いていたという。
2016年4月の熊本地震では自宅が損壊したという古舘さん。「天災はいつかは訪れる。携帯がつながったので、家族の無事を確認し、あとはじっとしていた」と話した。
新幹線に代わり、在来線で博多―熊本駅間の臨時特急列車「有明」が運行された。博多駅の改札口などでは長い行列ができていた。
鹿児島まで新幹線で帰る途中だったという鹿児島県いちき串木野市の水産業、植田武士さん(34)は「改札の外に出るのに1時間近くかかった。熊本で、また大きな地震があり心配。今夜泊めてもらえる知り合いを探します」と話した。
熊本市のJR熊本駅では、多くの人がスマートフォンを片手に不安そうな表情を浮かべていた。広島市の会社員の男性(38)は、4日が仕事始めで熊本市の実家から戻る予定だった。「状況が分からないので、どうしようもない」。孫を熊本県内の娘の元に送り届けに来たという鹿児島県の女性(65)は「お正月から、なんで。遅くなっても今日中に帰りたいけど……」と不安げに話した。
JR九州によると、4日の運行は未定という。
西日本鉄道では天神大牟田線の柳川―大牟田駅間で運転を一時見合わせ、午後10時すぎに再開した。
九州自動車道は、みやま柳川IC(インターチェンジ)―熊本IC間で上下線とも一時、通行止めになった。道路に目立った被害は確認されていない。
熊本空港は地震後、点検のために滑走路の運用を一時停止したが、安全が確認され、午後6時40分に再開した。一部の便に遅れが出たが、運休はなかった。
九州電力によると、玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)、川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)はいずれも異常なしと確認されたという。