九州北部豪雨で被害を受けた福岡県朝倉市杷木松末(はきますえ)の石詰(いしづめ)集落で3日、竹で組んだやぐらを燃やす正月の伝統行事「鬼火焚(た)き」があった。被災後、初めての開催で、住民や帰省した家族ら約50人が1年間の無病息災を祈り、犠牲者を追悼した。福岡、大分両県で計40人が亡くなった豪雨被害から5日で1年半を迎える。
午前7時、集落の入り口に設けた高さ7メートルのやぐらに放たれた火の勢いが増すと歓声があがった。ポンポンと竹が破裂する音が谷あいに響き、火に手を合わせる子どもの姿もあった。
祖母が石詰出身で家族と帰省中の小城正希君(7)=大阪府池田市=は「花火みたいで迫力がすごい。ここで水鉄砲で遊んだのが懐かしいです」と話した。
18世帯59人が暮らしていた石詰集落では5人が犠牲になった。氾濫(はんらん)した川の改修が終わる数年先まで全員が避難を強いられる地域に指定されている。集落で集まる機会を保とうと、バス会社を営む小嶋嘉則さん(74)や、区長の小嶋喜治さん(63)らが企画した。
地元小学校の教師を務めた井手松雄さん(89)も元の自宅から炎を見守った。福岡県久留米市の借家に避難していた昨年12月、がんが見つかり、家族の付き添いで入院先から駆けつけた。「懐かしい。石詰は本当にいいところだ」
井手さんの教え子だった小嶋嘉則さんは「先生にも集まってくれた人にも喜んでもらえてよかった。何年かかるか分からないが、復興できるように前向きにがんばりたい」と話した。(竹野内崇宏)