タイの発電所建設をめぐり現地の公務員に約4千万円の賄賂を渡したとして、発電機器メーカー「三菱日立パワーシステムズ」の元幹部3人が不正競争防止法違反(外国公務員への贈賄)の罪に問われた事件で、元取締役の内田聡被告(64)の初公判が11日、東京地裁であった。内田元取締役は「共謀して金銭を供与した事実はありません」と無罪を主張した。
日本での司法取引、増えるか 初適用となったのは企業
司法取引を初適用、法人を不起訴に タイでの贈賄事件
この事件では、昨年6月に導入された司法取引が初めて適用されており、東京地検は同社から資料提供や役員らの捜査協力を受ける代わりに、法人としての同社は起訴しないことで合意している。
内田元取締役は、元執行役員の錦田冬彦被告(63)、元部長の辻美樹(よしき)被告(57)=いずれも同罪で公判中=とともに、発電所の建設資材を現場に持ち込めなくなったトラブルを解決するため、2015年2月、タイ運輸省港湾局の幹部に現地通貨で3993万円相当の賄賂を渡したとして在宅起訴された。錦田元執行役員と辻元部長は、昨年12月の初公判で起訴内容を認めた。
検察側は冒頭陳述で、内田元取締役について、錦田元執行役員と辻元部長から「賄賂を提供しなければ問題が解決しない」と報告を受けたと指摘。納期に遅れれば多額の遅延損害金が生じると考え、「仕方ないな」などと了承した、と主張した。(阿部峻介)