日立製作所が受注したプラント建設工事の現場監督だった男性(当時66)が過労自殺したのは、同社などが勤務時間などに配慮しなかったからだとして、大阪市内に住む遺族が10日、日立と下請け業者に慰謝料や逸失利益など計5500万円の支払いを求める訴訟を大阪地裁に起こした。
訴状などによると、男性は建設関係の会社を退職後、2017年4月から、茨城県の建設会社から個人で仕事を請け負う契約で、東京都内のプラント建設工事に従事した。この建設会社は2次下請け業者として工事に入り、男性は1次下請け業者や日立社員から指示を受けて働いたという。
同年7月以降、4カ月の工程を2カ月で終えるよう指示されて業務が増え、30日間休みなく働いた末、同年9月に自殺した。労働基準監督署は、亡くなる直前の男性の時間外労働は月138時間に上っており、過労で気分障害を発症して自殺したとして昨年6月に労災認定した。遺族側は日立や下請け業者らが「男性の常軌を逸した長時間労働を把握できたのに、労働時間軽減などの管理をしなかった」と主張している。
遺族側代理人の松丸正弁護士によると、建設業界では形式上は個人請負の契約で労働者を雇って労働基準法の規制を免れたり、元請けの大企業が下請け業者の労働者を自社の労働者として使ったりする手法が蔓延(まんえん)しているとみられるという。松丸弁護士は「誰も労働時間を管理しない全くの無責任体制の現場で、退職して身分が不安定な高齢者が犠牲になった。訴訟を通じて実態を明らかにしたい」と話した。
日立は「訴状を受け取っていないためお答えしかねる」としている。
■孫とのテレビ電話途…