積水ハウスが土地取引を巡り所有者を装った「地面師」グループに代金を詐取されたとされる事件で、不法滞在の疑いでフィリピン当局に身柄を拘束されていたカミンスカス(旧姓・小山)操(みさお)容疑者(59)が11日、日本に強制送還された。警視庁は同日、偽造有印私文書行使などの疑いで逮捕し、発表した。「関わっていません」と容疑を否認しているという。
一連の事件の逮捕者は17人目で、うち6人が約55億5千万円を詐取したとする詐欺罪などで起訴されている。同庁は事件を計画したとされる内田マイク(65)、詐取金を管理していたとされる土井淑雄(よしお)(63)の両容疑者とともに事件を主導したとみて調べる。
カミンスカス容疑者は11日夜、マニラ空港発の航空機で羽田空港に到着し、逮捕された。午後8時20分ごろ、捜査員ら数人に囲まれて到着口から出てきたカミンスカス容疑者は黒のパーカのフードをかぶり、黒いマスクと色つきのメガネ姿。うつむき加減で歩いており表情はうかがえなかったが、足取りはしっかりしていた。
捜査2課によると、カミンスカス容疑者は他の容疑者らと共謀して2017年6月、東京都品川区の旅館跡地の所有者になりすまして偽造の委任状などを法務局に提出し、うその登記をしようとした疑いがある。
捜査関係者らによると、所有者役の羽毛田正美(はけたまさみ)被告(63)=詐欺罪などで起訴=の「財務担当」を名乗って積水ハウスとの交渉に同席。「内縁の夫」役を含めたなりすまし役らを指揮し、うその取引をまとめたとされる。
知人によると、カミンスカス容疑者は事件後、東京・浅草のフィリピンパブに頻繁に通い、都内のマンションの部屋を複数購入するなどしていた。昨年10月13日にフィリピンに出国。警視庁が最初の8人を逮捕する直前で、出国前に少なくともマンションの1部屋を売却していたという。
フィリピン入管当局によると、カミンスカス容疑者は、日本人などに最大30日間認められているビザなしの短期滞在で入国。入管関係者によると、約2カ月間行方不明だったが、北部ルソン島アンヘレス市にいることを確認。職員が後をつけ、同12月19日、マニラ首都圏パサイ市の日本大使館近くの路上で身柄を拘束した。
現地報道によると、カミンスカス容疑者はホテルなどで生活。入国時、所持金は500ユーロ札100枚(約640万円)だったが、拘束時には半分ほどに減っていた。「一方的に罪をかぶせられたくない。主張すべきことを日本で主張したい」と話したという。
カミンスカス容疑者は昨年2月、朝日新聞の取材に応じた。「不動産仲介を頼まれただけ」とし、羽毛田被告については「本物だと思っていた。パスポートで本人確認をしたが、ホログラム(による偽装)があった。100%だまされた」と自身は被害者だと強調していた。