ゲーム業界の求人広告会社などと業務委託契約を結んで働いていた女性(当時30)が昨年自殺したのは、社長のパワーハラスメント(パワハラ)が原因だったなどとして、女性の遺族や元同僚の男性2人が同社と社長に損害賠償などを求めた訴訟の第1回口頭弁論が11日、東京地裁であった。会社側は請求の棄却を求めた。また会社側はこの日、記者会見し、「相手の主張は事実無根」と訴えた。
会社はビ・ハイア(東京都)。
訴状によると、女性と元同僚の計3人は同社などと業務委託契約を結んでいたが、社長の指揮命令をうけ、実質的に雇用関係のある従業員として働いていたという。
また、社長は女性らに買い与えたかばんなどの費用を請求し、女性らに債務を負わせたという。社長は給料を天引きするなどして、3人の生活費がつきるようになると、会社事務所に住まわせたとされる。さらに深夜も働いていることを確認するためにLINEで5分ごとに「起きてます」と報告を強いたこともあったという。
一方、会社側は答弁書で、3人は業務委託契約であり、実質的に従業員であったとする主張を否認し、争う方針を示した。
かばんの購入費などは社長が立て替えたもので、返済は「女性らが社長に申し入れた」と主張した。給料の天引きや、LINEの報告を強制したという主張は否認。事務所に住むように「命令したことはない」と反論した。
訴状ではこのほか、昨年2月に女性が自殺する前には、女性が使っていたパソコンのモニターを破壊し「(死んだら)ゴミが増えるだけだ」など、暴言を繰り返したというが、会社側は答弁書で、モニターの破壊は認めた一方、暴言は否認。社長が女性の自殺を止めるために、「強い口調で厳しい言葉をぶつけたことはあった」とした。自殺の原因がパワハラとする内容は否認した。
社長はこの日、代理人と共に開いた記者会見で、「相手の主張は事実無根で虚偽に満ちた作り話だ」と話した。
また原告側が10月に開いた記者会見で、自殺がパワハラによるものと決めつけられたといい、名誉が毀損されたとして反訴したことも明らかにした。電話やメール、宅配便などで多くの嫌がらせをうけたという。
社長は亡くなった女性について、「10年近く苦楽をともにした仕事の戦友、妹同然の存在で、強い悲しみや苦しみ、なぜ彼女を救えなかったのかと自責の念が続いている」と語った。