刑事裁判に被害者が参加できる制度が始まって、10年。かつて「蚊帳の外」に置かれていた被害者が当事者として裁判に加わり、意見を述べることが定着している。制度を利用する人数はこの数年横ばいだが、性犯罪の被害者の割合が次第に高まっている。
被害者参加制度によって法廷の光景は変わった。昨年12月、東京地裁で開かれた裁判員裁判では、検察官の後ろの席に5人の被害者側弁護士が並び、被告が公判の最後に語る内容を一斉にメモしていた。
この事件は、芸能事務所社長の男(34)がタレント志願者ら5人の女性に性的暴行を加えたとして、強姦(ごうかん)致傷罪などに問われた。女性5人は全員、弁護士をつけて被害者参加した。被告人質問では弁護士が被害者本人に代わって「被害者に対して、どういう気持ちですか」などと質問。検察官の求刑の後には弁護士がそれぞれ、「可能な限り長期の実刑を望みます」などと量刑への意見を述べた。判決は、「性行為は同意があった」という社長側の主張を退け、懲役23年を言い渡した。
被害者のプライバシーにも配慮がされていた。法廷では「Aさん」などと呼ばれ、裁判長は「名前を言わないように」と、被告や証人に注意。こうした制度は、被害者参加と同じく、2007年の刑事訴訟法改正で実現した。
最高裁によると、強制わいせつや強姦(現・強制性交)罪など性犯罪の被害者参加人数は制度が始まった09年はのべ60人で、全体の11%だった。しかし、14年に2割を超え、17年と18年(10月まで)は23%と、ほぼ4分の1を占めた。人数も17年は321人と、09年の5倍以上。性犯罪の裁判の2割ほどで、被害者が参加していると推計される。
なぜ、これほど増えているのか…