和紙と古い街並みで知られる岐阜県美濃市に、もう一つ伝統文化がある。住民が台本を手がけ、4月の美濃まつりで演じる寸劇「美濃流し仁輪加(にわか)」だ。権力者や世相の風刺もあり、元NHKプロデューサーの中村儀朋(よしとも)さん(68)=愛知県瀬戸市=は、30年来のファン。昨年、ドキュメンタリー作品をつくり、「地方の時代」映像祭(NHK、日本民間放送連盟など主催)で優秀賞に選ばれた。2月5日、地元で上映会がある。
仁輪加は「俄」「にわか」とも書く。江戸から明治にかけ、各地で演じられた庶民芸能だ。「落ち」のある笑いのなかに、ちくりと権力者を皮肉る。新喜劇や漫才などの原点にもなった。博多、大阪、熊本など全国約20カ所に継承されている。
美濃市には、長良川の舟運と和紙製造で栄えた江戸時代後半、上方から伝わった。移動しながら辻で演じる流しが特徴で、いまは市中心部の15町内会が出演する。演じるのは数人の男性で、女形も登場する。笛や太鼓のおはやしもあり、まつりに華を添える。2日間で1300人ほどの人出になる。コンクールで上位に選ばれると、5月の連休などでも上演できる。
1996年に国の無形民俗文化財に指定され、市は、にわか学会事務局も引き受けている。
美濃市仁輪加連盟会長の豊澤正信さん(60)は長年、台本を考え、自ら演じてきた。最近考えたのは、こんな謎かけだ。
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