ワンス・アポン・ア・タイム・イン・宝塚――。「むかしむかし、宝塚で」という冠にぴたりとはまる星組「霧深きエルベのほとり」が、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)で上演中だ。半世紀以上前に初演された菊田一夫の名作をリバイバルさせた。主演のトップスター紅(くれない)ゆずるは「古さは全く感じない。私自身が古き良き宝塚を知り、それにプラスアルファで現代にリメイクしていきたい」と語る。
劇作家の菊田が宝塚のために書き下ろし、1963年に内重(うちのえ)のぼる主演で初演。潤色・演出を手がける上田久美子が「完璧な物語構造と素朴な言葉の中に本物の男らしさを宿すセリフを兼ね備えた、素晴らしい宝塚の遺産」とほれ込んでいた作品で、大劇場では36年ぶり5度目の上演となった。
船乗りのカール(紅)と、家出した良家の令嬢マルギット(綺咲(きさき)愛里(あいり))が、エルベ河に近い港町ハンブルグのビア祭りで運命的な恋に落ちる。が、家柄や価値観の違いが壁となり、マルギットに思いを寄せながらカールは身をひく。
上田から「カールの役が合うと…