中国に住むトルコ系の少数民族ウイグル族に対する人権侵害が指摘されている問題で、トルコと中国の両政府が互いを非難し合っている。トルコが「中国の組織的な同化政策は人類の恥」と批判すると、中国は「偏りなく中国の政策を理解してほしい」と反発。双方とも相手国との経済関係を考慮しつつ、世論を意識した対応を続けている。 きっかけは、トルコ外務省が9日に発表した声明だ。中国政府の拘束下にあったウイグル族の著名音楽家が死亡したと指摘し、中国を厳しく批判。「100万人以上が恣意(しい)的に逮捕され、中国の収容所や刑務所で拷問や政治的な洗脳をされているのは、もはや秘密ではない」とも非難した。 ウイグル族にはイスラム教徒が多く、漢族中心の中国政府との摩擦から多数が拘束されてきた。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は昨年9月、約100万人が「再教育収容施設」に収容されていると指摘。欧米で強まった批判に対し、中国政府は施設は「職業訓練」のためだと反論してきた。 ウイグル族を巡り、トルコ政府はこれまで、亡命者を数万人規模で受け入れてきたとされる。2009年に中国・新疆ウイグル自治区の騒乱で大勢の犠牲者が出た際には、当時首相だったエルドアン大統領が「ジェノサイド(集団殺害)」だと中国を非難した。 中国との経済的な関係が深まった近年は声高な批判を控えていたが、今回は9日に複数のトルコメディアが、「(音楽家が)殉教者になった」などと相次いで報道。エルドアン政権は3月末に統一地方選を控えており、ウイグル族擁護を鮮明にして、与党が頼る民族主義的な有権者へのアピールを狙った可能性がある。ただ、声明はエルドアン氏や外相でなく、外務省報道官名義で出しており、対中関係の決定的な悪化を避けようとしたともとれる。(アンカラ=其山史晃) 中国、正当性を強調 「非常に悪質だ。偏りなく正確に中国の政策を理解してほしい」。中国外務省の華春瑩副報道局長は11日の定例会見で、トルコ外務省の声明に反論した。 中国メディアは10日、トルコの批判のきっかけとなった音楽家を名乗る男性が「私は健康だ」と語る動画を公表。華氏は会見で、「生きている人を死んだとうそを言って批判するのは無責任だ」と強調した。 ただ、シルクロード経済圏構想「一帯一路」の成功や対米牽制(けんせい)の意味でも、中東の地域大国トルコとは対立を避けたいのが中国の本音だ。ウイグル問題で火種を抱えつつも、ここ数年は「反テロ」での共闘を呼びかけ、距離を縮めてきた。 今回のトルコの批判ははねつけつつ、共産党機関紙の人民日報は13日、「トルコもテロの脅威に直面している。相互信頼を強化するべきだ」と改めて訴え、関係を決定的にこじらせるべきではないとの姿勢を示した。 ウイグル問題をめぐる国際社会の批判の高まりも、中国の対応に一定の影響を与えているとみられる。中国政府は1月、一部の海外メディアに新疆ウイグル自治区内の再教育施設を公開し「再教育でテロ事件を未然に防いでいる」と説明するなど、正当性のアピールを強めている。(上海=宮嶋加菜子) ◇ 〈ウイグル問題〉 ウイグル族は、中国に約1千万人いるとされるトルコ系少数民族。多くはイスラム教徒で、中華民国時代の1930~40年代に「東トルキスタン」建国を目指す動きが起きるなど、歴史的にも漢族との確執を抱えてきた。 2009年、民族政策への不満や社会的な差別を背景に、新疆ウイグル自治区ウルムチでウイグル族と漢族が衝突、2千人近い死傷者が出た。宗教活動などへの統制を強めた政府に対し、反発するグループが武装化して対抗するなど民族対立が深まった。 国際人権団体などは、16年以降、ウイグル族の拘束が急増し、約100万人が「再教育収容施設」に収容されていると指摘。国連人種差別撤廃委員会が解放を勧告するなど、人権問題として国際的な批判が高まっている。 |
トルコ「中国の政策は人類の恥」 批判が過熱する理由は
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