16日に開幕したアイスホッケー男子のアジアリーグ・プレーオフに出場している日本製紙は、今季限りで廃部するため受け入れ先を探している。ほかの国内3チームもリーグ脱退を検討していることが明らかになり、来季以降のリーグ存続が危ぶまれている。
「生きるか死ぬか」アイスホッケー 二刀流で人口増?
アイスホッケー日本製紙が廃部へ アジアリーグ4度優勝
全日本選手権7度優勝の強豪
昨年12月に今季限りでの廃部を発表した日本製紙は1949年、旧十条製紙が北海道釧路市を拠点に創部。合併に伴い、93年に日本製紙に変わり、全日本選手権を7度、アジアリーグを4度優勝してきた強豪だ。
アイスホッケーやスピードスケートが盛んで「氷都」とも呼ばれる釧路市では今年1月、チーム存続を求める署名活動が始まった。3月中旬をめどに10万人以上を集め、釧路商工会議所会頭に提出する予定だ。「氷都くしろにクレインズ存続を願う会」の寺山博道代表(47)は「このままではアイスホッケー界が衰退してしまう。まずは受け皿が必要」と危惧する。
チームのトレーナーを約30年務める笹森克己さん(61)は「(日本製紙は)選手層が厚く、攻守ともにそろっている。何年後かに黄金時代を迎えると予感させるチームだった」と残念がる。チームスタッフの小山内茂仁さん(58)は「企業スポーツの限界は理解できるが、アイスバックスのように廃部後に新しいチームができる可能性もある」と受け入れ先が見つかることを願う。
日本製紙はレギュラーシーズンで19勝15敗の成績を収め、全8チーム中4位。上位5チームによるプレーオフの1回戦(2戦先勝方式)は5位の王子と対戦。16日は1―3で敗れた。主将のFW上野拓紀(32)は、「たくさんの人が応援してくれている。今日(17日)勝って19日の試合につなげたい。チームのためにプレーする、それだけです」と意気込んだ。
海外遠征費の負担大きく
アジアリーグでは廃部する日本製紙だけでなく、ハイワン(韓)も脱退する。関係者によると、リーグの存続が不透明になる中、日本製紙を除く国内3チームも脱退して国内リーグの再立ち上げを検討しているという。アジアリーグ解散の可能性もあるという。
ただ、国内3チームが脱退するという一部報道については、アジアリーグの小林澄生チェアマンは今月13日、リーグの公式ホームページで「そのような事実は一切ない」と打ち消し、「今後のリーグのあり方や改革に関しては喫緊の課題であり議論が継続的に行われている」としている。
アジアリーグは2003年、競技の活性化を求めて結成された。98年長野冬季五輪を境に、日本リーグ参加チームが相次いで休廃部したためだ。あらゆる競技を通じ、アジア初の国際リーグとして日韓の5チームで始まり、今季は日本4、韓国3、ロシア1の計8チームが参加してきた。ただ、海外遠征などで年間運営費の負担は大きく、コスト削減にも限界があった。
14年ソチ冬季五輪から2大会続けて五輪に出場した日本女子に対して、日本男子は長野五輪を最後に出場権を獲得できていない。選手登録された競技人口は98年度前後には2万8千人を超えたが、15年度には1万9千人を割った。日本アイスホッケー連盟の坂井常雄常務理事は「アジアリーグのビジョンに実態が追いついていない。日本のアイスホッケー界が変わらないといけない」と話す。(浅野有美)