かつて日本女子のモーグルを先頭で引っ張った元エースが、再びワールドカップ(W杯)の舞台に帰ってくる。長い年月を積み重ね、もう一度はい上がろうと決意した。
伊藤みき(北野建設)、31歳。昨季は4大会連続となる五輪切符を逃し、今季はナショナルチームからも15年ぶりに漏れた。引退の瀬戸際に立たされた。それでも、あきらめなかった。
2日に秋田であった競技会。「W杯に出たいっていうのが、本当に強かったから」。3位以内に入れば、ナショナルチーム外でもW杯秋田たざわ湖大会(23日開幕)への出場権が得られる選考会だった。2位。「私にとって、すごくすごく大きな一歩」。伊藤は涙を流した。
残してきた足跡は輝かしい。15歳から日の丸を背負い、2013年には世界選手権で2位、W杯でもデュアルモーグル(非五輪種目)で優勝。五輪は06年トリノ大会から3大会連続で代表に選ばれた。
順調なスキー人生は、しかし、けがで暗転する。13年12月、遠征先で右ひざ前十字靱帯(じんたい)を損傷。手術とリハビリを経て15年12月に再びW杯に戻ったが、以前のような活躍はもうできなくなった。3季前に11位に食い込んだのが精いっぱい。結果、昨年2月の平昌(ピョンチャン)五輪出場を逃し、日本代表からも外れることになった。
昨春、引退を迷ったという。
「若い頃のような体じゃない。もう、いいかな」「でも、大好きなモーグルを『ナショナルチームを外されたからやめます』なんて……」
不安定に移ろう心の内は「本当にパチンコ玉みたいだった」と言う。「バンッバンッって、気持ちがあちこち行ったり来たり」。プライベートチームで活動を続けたが、「スキーを履きたくない」と思った日は少なくなかった。「引退する勇気もなかった」とも。
揺れる気持ちがようやく固まったのは、1月に入ってからだったという。
出るつもりだった大会が、雪不…