「毎月勤労統計」の不正調査問題で、根本匠厚生労働相の対応が後手に回り、事実解明の司令塔の役割を果たしていない。有識者検討会での調査方法の議論に「官邸の影響は全くない」と断言してからわずか1日で、中江元哉・首相秘書官(当時)が関与していた可能性が明らかに。国会答弁や記者会見での発言も迷走している。野党からは厚労相としての資質を問う声が相次ぐ。
20日の衆院予算委員会では、調査方法を議論した「毎月勤労統計の改善に関する検討会」の意見集約に影響を与えた可能性がある「委員以外の関係者」が焦点となった。
検討会は2015年8月の第5回会合で、従来の全部入れ替え方式の継続が「適当」とする素案をまとめた。だが、厚労省は9月の第6回会合で「引き続き検討」との中間的整理案を提示。姉崎猛・厚労省統計情報部長(当時)は「総入れ替えではなく、部分入れ替えを検討したい」と発言した。
検討会の座長を務めた阿部正浩中央大教授は朝日新聞の取材に対し、第6回会合の2日前に厚労省から「委員以外の関係者から部分入れ替え方式を検討すべきではないかとの意見があった」との連絡を受けたと答えた。
根本氏は19日の記者会見で経緯を検証する考えは示さないまま、「官邸の影響は全くない」と断言。20日の予算委では「委員以外の関係者」が中江氏だったと明かした。
中江氏は検討会の設置前にも、全部入れ替えによる過去の賃金伸び率の変動に関する「問題意識」を姉崎氏らに伝えていた。国民民主党の玉木雄一郎代表は20日の記者会見で「官邸主導で統計がゆがめられた疑惑が高まった」と指摘した。
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