日本銀行の黒田東彦(はるひこ)総裁が朝日新聞の単独インタビューに応じ、目標の物価上昇率2%への勢いが景気減速などで失われれば、「当然、追加緩和策を検討することになる」と述べた。金融緩和を強化する手段として、金利引き下げや国債の買い増しなど「様々なオプションとその組み合わせということがあり得る」とした。
黒田総裁は追加緩和策として、現在は「マイナス0・1%」の短期金利や「ゼロ%程度」の長期金利の水準の引き下げ、マネタリーベース(市場に供給する資金量)の「増加のテンポを加速する」などを挙げた。「経済や金融の実態に最も適切で、副作用が最小限にとどめられるような政策をとる」とし、複数の手段を組み合わせる考えも示した。
大規模緩和の開始から約6年でも物価目標は達成できず、金融機関の収益悪化など副作用もある。黒田総裁は人口減や金利低下で「地域金融機関の基礎的収益力が趨勢(すうせい)的に低下しているのは事実」と認め、「金融機関の金融仲介機能が低下していく恐れもあるので注視している」とした。だが2%目標は「今やグローバルスタンダード(世界標準)になっている」「変える必要はない」とし、達成前に「政策の枠組みを変えるようなことは適切ではない」と語った。
10月に予定される消費税増税については、軽減税率やポイント還元などで「直接的には経済にネガティブ(否定的)な影響はほとんどない」と述べた。米中貿易摩擦や英国の欧州連合(EU)からの離脱問題で不安が高まる世界景気は「欧州の状況はやや気になる」としつつ「メインシナリオとしては比較的順調な世界経済の拡大が続く」との見通しを示した。インタビューは21日に行った。(湯地正裕)