昨季のチーム防御率は12球団最悪の4・36。かつての「投手王国」の再建を担うのが、今季就任した阿波野秀幸投手コーチ(54)だ。現役時代、スライダーやスクリューを武器に通算75勝を挙げた左腕は、練習法にも「ひとひねり」を加え、投手陣の立て直しを図っている。
力を注ぐのが個人練習。投手一人ひとりの課題や特性を見抜き、「手作り」の練習法を提案する。例えば、抑え候補の2年目、鈴木博には長さ30センチ程度の細い丸木でのシャドーピッチングを勧めた。「タオルでは空気抵抗が大きく、腕にブレが生じる。一気に振り抜く感覚を覚えて欲しかった」と話す。
中継ぎとして期待する6年目の祖父江には、ロープを波打たせる練習を採り入れた。「力を抜くところと、入れるところ、関節を使う順番など、ひじの使い方が意識できる」と説明する。
かまぼこ板を投げたり、利き腕とは反対側(右投手なら左打席)で打撃をしたり、提案する練習法は自らが試したものばかりだ。近鉄のエースとして活躍した若い頃に比べ、現役時代の終盤には様々な工夫をした。ホームセンターで買った水道蛇口のハンドル部分をひねって、スライダーの曲がり方を研究したという。
「何でこんなことをやるのか。持ち前の体格をどう生かし、地球の重力を利用するにはどうすればいいのか。選手たちは考えると思う」
一風変わった練習法で興味を引き出し、意識改革にもつなげる。「阿波野マジック」が静かに進んでいる。(鷹見正之)