西武の担当記者には日課がある。毎日早朝に宿舎を出て、宮崎・南郷中央公園の球場まで約5キロの道のりをランニングする辻発彦監督とともに走ることだ。
早出の練習をする選手たちのバスよりも早く、午前7時半すぎに宿を出発。1キロ6分のペースで走っている間は、背中から気軽に話しかけられないオーラが漂う。それが終わると穏やかな表情が戻り、「今日は少し早かったかな」などと汗をぬぐいながら、グラウンドに向かう。このひとときが、記者と監督の“距離”を縮めている。
監督に就任し、3年目。なぜ、毎日のように走るのか。
「選手が頑張っているから。監督になって、自分もなにか一つ、頑張ろうと決めたんだよね」
現役時代は名二塁手として、西武の黄金期を支えた。なのに、秋山や清原の陰に隠れがちで、「スポーツ紙の1面を飾ったことはほとんどなかった」という。だからこそ、「活躍したときの監督の一声や、見てもらうことが選手にとってどれだけうれしいことかがわかる」。
秋山、山川、源田といった昨季リーグを制した強力打線の主力に対しては、「あいつらは大丈夫」とそっと見守る。一方で、二塁のレギュラー候補の新人・山野辺や、外野の木村、金子侑といったレギュラーをつかみきれない中堅には常に付き添い、身ぶり手ぶりを交えて指導する。
チームから菊池、浅村、炭谷が抜けたが、「今ある戦力で戦うのが野球」と辻監督。悲観することなく、あくまでも自然体だ。(照屋健)