グラブやバット、ボールも使わずひたすら走る。工藤監督就任5年目の春季キャンプ。第2クールまで、連日のように陸上競技と見まがう異例のメニューが続いた。
初日となった1日の午前中、ウォーミングアップを終えた選手は多目的グラウンドの芝生の上でダッシュを繰り返した。600メートル3本、150メートル10本、10メートル5往復を5本。心肺機能を鍛えて回復力を高める狙いだが、苦悶(くもん)の表情を浮かべた選手が次々に倒れ込んだ。選手会長の柳田は「走って体は強くなる。いい機会」と言えば、ドラフト1位新人の甲斐野(東洋大)は「想像以上」と驚いていた。
今キャンプのテーマの一つが故障を防ぐ体作りだ。昨季はけが人が続出。投手陣は規定投球回数に誰も届かず、野手の全試合出場は2人だけとパ・リーグ連覇を逃す一因となった。今季は大きな戦力補強もない分、工藤監督も「しっかり走った中でも動ける体をつくれば少々のことでは壊れない。1年間戦える力をつけてほしい」と力を込める。
走るだけではない。グラウンド脇には、ボート競技やノルディックスキーなどの動きで心肺機能を高めるトレーニング器具も置いた。けがのリスクが高いベテラン選手らが走る量を減らす代わりに使い、下半身に過度な負担をかけない工夫をした。宿舎では、肩やひじ、股関節などの専門家を招いて計4度の座学も開催。故障の予防法を選手自身に学ばせている。
体も頭も鍛え、3年連続日本一を狙うシーズンを「完走」する準備を進めている。(甲斐弘史)