日本銀行が、金融政策を決める重要指標の物価見通しの出し方を見直し、消費増税の影響を除かない方針に転換した。増税対策の教育無償化で物価が押し下げられ、増税による押し上げと相殺されるためという。新たな見通しは上ぶれしており、明確な説明なしに変更した日銀の姿勢を疑問視する声もある。
黒田東彦(はるひこ)総裁が26日、衆院の財務金融委員会で物価見通しについて、「色んな要因を除外するという扱いはなるべく限定的にすることが望ましい」と述べた。「基本的には両方(増税と教育無償化)の影響を織り込んだ見通し係数を中心に説明していくことが適当」とした。今後の物価見通しの具体的な表記は「政策委員会の議論を踏まえる」(黒田総裁)という。青山大人衆院議員(国民民主党)の質問に答えた。
1月の物価上昇率見通し(増税と無償化の影響を除く)は2019年度が0・9%、20年度が1・4%。増税影響などを除かなければ19年度は0・2ポイント高い1・1%、20年度は0・1ポイント高い1・5%に上ぶれする。
物価見通しは年4回公表の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」に記され、物価目標2%への道筋を示す指標だ。日銀は消費増税は特殊要因として、除いた数値を重視してきた。昨年10月は「消費者物価指数(除く生鮮食品)」とともに、「消費税率引き上げの影響を除くケース」を、同等に掲載していた。
ところが今年1月は「除く」ケースが「(参考)消費税率引き上げ・教育無償化政策の影響を除くケース」とされた。増税の押し上げと無償化の押し下げを除いたものが示された。「(参考)」を加えて「参考値」扱いとし、増税影響などを含む数値に軸足を移した、としたつもりだったようだ。だが公表後の会見で黒田総裁から特段の説明はなかった。みずほ証券の上野泰也氏は、「(増税などは)一時的な要因で長期的にはなくなるものとはいえ、1月時点でしっかりと説明すべきで、市場に対してフェアでない。ご都合主義的ともいえ、釈然としない」と指摘する。(湯地正裕)