1300年前の優美な姿を今にとどめる国宝・薬師寺東塔(8世紀、高さ約34メートル)。2009年の事前調査からほぼ10年、明治以来約110年ぶりの解体修理が続けられてきた。それもいよいよ最終盤。来年4月には完成を祝う落慶法要が営まれる。朝日新聞記者が解体修理の現場を当初から密着取材しており、古代建築を未来に伝えるための事業の姿を紹介する。(編集委員・小滝ちひろ、宮崎亮)
1300年間身じろぎもせず 薬師寺東塔、いま再び
【特集】薬師寺
東塔は木造の三重塔で、7世紀後半~8世紀初めの「白鳳(はくほう)文化」の様式を伝えるとされる。初層(1階)~3層(3階)のそれぞれに裳階(もこし)と呼ばれる飾り屋根があり、空を飛ぶ白鳥のような動感を醸しつつ、じっと立ち続けてきた。「凍れる音楽」という別名がふさわしい、リズミカルな建築美としても有名だ。
だが、1300年という長きにわたる風雪は容赦がなかった。部材の風化や腐食が進み、屋根が垂れ下がった。飛天の舞を刻んだ「水煙(すいえん)」など塔最上部の装飾も微妙に傾いていた。
解体作業は2012年から本格化した。部材をひとつずつ丁寧に取り外しては計測し、地震や風の影響を探るシミュレーションなども重ねられた。
解体を進めた奈良県文化財保存事務所の匠(たくみ)たちを悩ませたのは、釘だった。日本の伝統的な木造建築は釘を使わず縦横に木材を組み上げると言われるが、実はあちこちに鉄の釘が打ち込まれていた。木が堅く、U字やくの字に曲がった釘を引き抜くのに苦労した。
最大の難関は、塔の中心を貫く…