厚生労働省の賃金構造基本統計の不正調査問題で、総務省は8日、現場は10年以上前から不正を認識していたが幹部は把握していなかったなどとする検証報告書を発表した。隠蔽(いんぺい)は認められなかったと説明。「厚労省外し」をした検証だったが、隠蔽の認識を詰め切れておらず、甘さも目立った。
報告書は、本来の調査員調査から勝手に郵送調査に変えた不正を、現場レベルでは10年以上前から認識していたが、幹部はこうした現場の認識を把握できていなかったとした。検証作業チームを率いた白岩俊・総務省官房審議官は、担当者に統計法違反の認識がなく幹部にも深い認識がない状況だったとして、「隠蔽という言葉は使えない。隠す動機があると認定するのは困難だ」と述べた。
郵送調査を始めた時期も特定できなかった。10年以上前から総務相に届け出た調査員調査をしていないと認識した担当職員は複数いたが、「法律違反で重大なことという考えに至らなかった」と放置されていたとした。
担当者の証言から、現場に「(正規の手続きをし直し)総務相の承認を得る説明の手間が耐えがたい」「長年の慣行」との意識があったと指摘。厚労省内の「遵法(じゅんぽう)意識の欠如」「事なかれ主義の蔓延(まんえん)」の打破が急務とした。
賃金構造基本統計の不正調査では、今年1月の総務省の一斉点検で厚労省の担当室長が意図的に報告せず、首相官邸の主導で「行政評価のプロ」とされる総務省行政評価局に調査を移していた。菅義偉官房長官は8日の記者会見で「厚労省と異なる立場から厳正な調査をし、郵送調査が10年以上さかのぼることが明らかになった」と成果を強調した。
しかし、幹部への調査は甘さを…