知事と市長が任期途中で辞職し、ダブル選にお互いが入れ替わって立候補する「クロス選」――。大阪でこの4月の統一地方選にあわせ、そんな異例の選挙が行われる。知事・市長側がある政党をターゲットに政局を仕掛けた末の展開だ。
「今回の(大阪府知事・大阪市長)ダブル選は全く大義がないと、しっかり訴えていただきたい」。9日午前、大阪市西区の公明党大阪府本部。集まった国会議員や地方議員ら約40人を前に、代表の佐藤茂樹衆院議員が声を張り上げた。
大阪府の松井一郎知事(大阪維新の会代表)と大阪市の吉村洋文市長(同政調会長)が任期途中で辞職し、知事・市長候補を入れ替えてダブル選に臨むと表明したのは8日。佐藤氏は2人の姿勢を「選挙の私物化」「党利党略」などと激しい言葉を並べて批判。あいさつを終えると、出席者から大きな拍手が起きた。
ここに至る「政局」で、公明は主要なプレーヤーだった。都構想の是非を問う住民投票の実施時期をめぐる維新との交渉決裂が、松井氏らがダブル選に突っ込む引き金を引いたからだ。この間、もともと都構想に反対だった公明は、維新との関係で難しいかじ取りを迫られ続けた。
発端は、2017年4月に維公幹部が水面下で交わした合意文書だ。「慎重かつ丁寧な議論」を前提に、住民投票実施を約束する内容。背景にあるのは「選挙」だ。
公明はこれまで、大阪で底堅い地盤のある維新との決定的な対立を避けようと動いてきた。関西には六つの衆院選挙区で現職がおり、議席の維持は党にとって大きな課題だ。ある公明府本部幹部は「当時、いつ(衆院が)解散されるかわからない状況だった」と振り返る。実際、「合意」から半年後に衆院選があり、維新は候補者を立てず公明は議席を守った。
だが、それから約1年後、選挙をめぐって維新が「計算外」の一手に出た。松井氏が昨年末、改めて住民投票の早期実施を求めてきたのだ。今春の統一地方選を控え、自身や吉村氏の辞職によるダブル選もちらつかせた。
維新の投げたボールは、公明を…