春闘は13日に集中回答日を迎え、大企業の経営側が労働組合の要求に一斉に答えた。基本給の水準を底上げするベースアップを6年連続で実施するという回答が多かったが、その上げ幅は電機や自動車といった業界では、前年を下回る回答が相次いだ。
大企業の回答は、今後本格化する中小企業の交渉にも影響を与える可能性がある。一方、人手不足を解消しようと、好条件を打ち出す企業が出てくる可能性もある。賃上げの幅は、正念場を迎えている日本の景気の先行きに影響を及ぼす。
自動車業界では、ホンダが前年を300円下回る1400円を回答した。要求は月3千円。日産が前年と同様、月3千円の要求に対して満額回答した。
トヨタ自動車はベアを開示しなかった。定期昇給や各種手当なども合わせて月1万2千円の要求に対し、1万700円を回答した。
トヨタは長く、春闘全体の「相場役」を担ってきたが、昨年の回答で経営側がベアを開示せず、今回は労組側もベア要求を開示しなくなった。
トヨタは一時金については要求の年6・7カ月分に対し、組合員平均で夏季分120万円とした。組合側によると3・24カ月分。冬季分は協議を続けて今秋決める。
一時金を年間で回答しなかったのは、トヨタによると1969年以降で初めて。「トヨタのおかれている状況についての認識の甘さ」を指摘し、「今の時点で組合の申し入れに答えるのは時期尚早と考えた」としている。
電機業界では、統一交渉に臨んだ主な12社が前年実績より500円低い月1千円のベアを回答する方針を確認済みだ。12社のうち、パナソニック、三菱電機、NECは1千円を正式に回答した。要求は12社がいずれも3千円だった。
春闘は安倍政権になった後の2014年春闘から、「官製春闘」が続いてきた。政権が積極的に賃上げを促し経済界が応えてきた。
しかし、昨年5月に経団連会長に就いた中西宏明氏(日立製作所会長)は「官製春闘」に異議を唱え、ベアにこだわらず賞与や手当も含めた「年収ベースの交渉」を主張した。米中貿易摩擦や、今秋に予定される消費増税を背景に、景気の先行きを心配する声も経営側から出ていた。労組側もベアだけでなく、賃金の「絶対額」にこだわる姿勢を強調し始めている。