平成の経済は、バブル崩壊後の長期低迷や中国など新興国の台頭、格差拡大、IT化の進展などで激変した。元ソニーCEOの出井伸之氏(81)に平成の30年間を振り返ってもらい、新たな時代に向けた提言を聞いた。
――平成という時代は、日本経済にとってどんな時代だったのでしょうか。
「日本が凍りつくぐらいの北風が吹いた時代でした。1990年代に米国でIT革命が起き、中国経済の急成長が始まりました。一方日本は、85年のプラザ合意以降の猛烈な円高で製造業は国際競争力が揺らぎました。さらにバブル崩壊で、残った借金を返済するので手いっぱいでした」
「サッカーに例えれば、『バブル崩壊でオウンゴールをしている間にIT革命が起き、米国や中国にどんどん点を入れられ、気付いたら4対0で負けていた』という状況でした」
――とりわけソニーなど電機産業は厳しかった。
「社長就任前の93年、私は米ロサンゼルスでアル・ゴア副大統領(当時)の『情報スーパーハイウェー構想』の講義を聴きました。すべてのコンピューターをインターネットで結び、電子商取引と金融を一大産業に育てる壮大な政策です。私は、『インターネットは隕石(いんせき)だ。会社を変革しないと恐竜のように滅びる』と衝撃を受けました」
「心配は的中しました。インターネットの普及とともに、技術のアナログからデジタルへの転換が進み、新たなIT企業が米国で誕生しました。日本の製造業が得意としていた組み立て産業はもうけが出なくなりました。製品の構造が単純になり、人件費が安い中国や台湾の工場に対抗できなくなりました」
――平成の時代から得られる教…