9月20日に開幕するラグビーワールドカップ(W杯)日本大会まで、20日であと半年。アジア初開催のW杯で、日本は史上初の決勝トーナメント進出をめざす。チームを率いるニュージーランド出身のジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)を、日本のスタッフが献身的な姿勢で支えている。
ラグビーワールドカップ2019
佐藤秀典さん(37)は通訳として2度目のW杯に臨む。「チームジャパンがすごいことに挑もうとしている。身が引き締まる思い」と語る。
以前はトップリーグのキヤノンで通訳を務めるほか、過激なデスメタルバンド「INFERNAL REVULSION」のボーカルとして海外公演もしていた。2015年4月、前HCのエディ・ジョーンズ氏から直接、依頼を受け、「一生に一度のチャンス」と代表入り。15年W杯後も代表と再契約し、代表のオフ期間にバンドのライブやレコーディングをした。今は休止して、ジョセフHCとの仕事に集中する。
「エディさんはオンもオフも厳しい先生のよう。ジェイミーは兄貴、番長的な存在」。エディ前HCは、付き人のように仕事をすることを求めたが、ジョセフHCは違うという。ただ、仕事に対する厳しい姿勢は一緒で、「お前の言葉で奮い立たせてくれ」と言われた。「全部を捧げる気でやっている」。ジョセフHCのそばにいる時間を意識的に増やしている。
心がけているのは、「事前準備、予測すること、平常心」。コーチ陣は大半が外国人。彼らが話すことに耳を傾け、情報を収集。練習前にはコーチと一緒に戦術や練習方法の細部を映像で確認し、選手に伝える内容を頭に入れておく。
通訳は一瞬、一瞬が勝負だ。「僕が完全に把握していないと、鮮度を保ったまま伝えることができない」。試合前、ロッカールームの選手は武者震いし、目は血走っている。聞き落としや言い間違えは御法度だ。きついトレーニングをしているさなかは、選手の士気を下げられない。激しい口調で訳して選手を鼓舞する。