自称「おじいちゃん」がラグビー日本代表からの引退を撤回し、4大会連続ワールドカップ(W杯)出場への挑戦を決意した。ニュージーランド(NZ)出身で日本国籍を持つFWトンプソンルーク(37)=近鉄=だ。34歳だった2015年W杯で大車輪の活躍を演じた後、「もう、おじいちゃんだから」と国際舞台から退いた。しかし今年2月、世界最高峰のリーグ・スーパーラグビーで戦う日本チーム・サンウルブズに初招集され、9月に開幕するW杯日本大会への思いに火がついた。
ラグビーワールドカップ2019
自称「代表3番手」が1点差の好勝負演出 サンウルブズ
今月2日のチーフ戦(NZ)のメンバーが発表され、トンプソンは開幕から3試合連続の先発を勝ち取った。196センチ、110キロの体を低く折り曲げ、タックルを繰り返す。密集でボールに絡まなくても仲間を支える姿は変わらない。
強豪ワラタスに30―31と善戦した2月23日の第2戦後は、「いまは疲れたから、おじいちゃん。だけど、次の試合までにまた若くなる」と日本語で周囲を笑わせていた。
04年の来日時は母国NZ代表入りが夢だった。一方、実力的には難しいこともわかっていた。葛藤を抱えていたさなか、日本代表から声がかかり、「このチャンスを逃したら後悔する」と決断した。桜のジャージーを着て07年W杯に初出場し、10年には日本国籍を取得した。
15年W杯の躍進に貢献し、一度はやりきったと感じた。当時の代表の徹底した管理体制から解放され、近鉄でプレーしながら、家族と過ごす時間を大切にできた。食事も自由。「肉と野菜をバランスよく取り、時々、自分へのご褒美でスイーツも食べる。だから、少し太ったよ」と笑う。
そんなリラックスした日々が奏功したのかもしれない。4年前、「4年後は年齢的に無理」と決めてかかっていた衰えは「心も体も全然、大丈夫だった」。
17年6月、けが人続出のため1試合限定で代表に復帰した際も、W杯への意欲は封印した。それが、代表コーチも兼ねるサンウルブズのブラウンヘッドコーチ(HC)からメールで協力を頼まれて一気に高まった。「やりたいなら絶対にやるべきよ」。妻も背中を押してくれた。
「まず、サンウルブズだけに集中する」と言いつつ「日本で開かれるW杯は、日本ラグビーにとってすごく大事。求められれば、経験を生かして代表を助けたい」。献身的に働くスタイルは、いまの代表FW陣に欠けているものでもある。
4大会連続のW杯メンバー入りを果たせば、91~03年大会のCTB元木由記雄、FB松田努と並ぶ日本記録となる。(中川文如)