衆院厚生労働委員会は19日、「毎月勤労統計」の不正調査について集中審議をした。働き手の実質的な購買力を示す「実質賃金」の動きを、より実態に近いデータで算出・公表するよう求める野党は、公表に消極的な厚労省の姿勢を改めて批判した。
毎月勤労統計は2018年1月に調査手法や対象を見直した影響で、賃金の増減率が上ぶれした。総務省統計委員会は、実際の賃金の動きをつかむには17年と18年に続けて対象となった「共通事業所」に限った調査を重視すべきだとする。
厚労省は、賃金の支給額を示す「名目賃金」では共通事業所での変化率を公表したが、「実質賃金」では専門家の意見を聞く必要があるとして公表していない。2月につくった有識者検討会で議論している。
国民民主党の山井和則氏は、有識者検討会が12日にまとめた論点整理に、外部有識者として検討会に出た明石順平弁護士の「実質賃金の伸び率も早急に公表すべきだ」との意見が盛り込まれなかったことを問題視し、「これでは共通事業所での計算が難しいから発表しないのかと思う。(明石氏の意見の)隠蔽(いんぺい)だ」と批判。根本匠厚労相は「検討会の議論は公開している」と反論した。
野党は厚労省のデータから、共通事業所の実質賃金の伸び率が18年の大半の月で前年比マイナスになると試算しており、厚労省もこの試算を追認している。共産党の高橋千鶴子氏は「野党試算を認めているのに、公表についてわざわざ有識者検討会を立ち上げる必要があるのか」と質問。根本氏は「我々には統計の合理性についての説明責任がある」と述べ、検討会での議論が必要だと説明したが、高橋氏は「(不正調査が始まった04年から)15年間も不正データを出し続けてきたのに、なぜここだけ説明責任を強調するのか。時間稼ぎとしか言いようがない」と批判した。
一方、有識者検討会は19日の会合で、共通事業所の実質賃金の伸び率について、長期間の時系列データとして公表することは「困難と考えられる」とする中間的整理案をまとめた。ただ、今後も検討を続けるとしている。(村上晃一)