タイで2014年から続く軍事政権からの民政移管に向けた下院(定数500)総選挙が24日、投開票された。地元メディアは反軍政を掲げるタクシン元首相派のタイ貢献党と、親軍政の国民国家の力党が第1党を争っていると報じており、次期政権の枠組みをめぐり、軍政のプラユット暫定首相の「続投」を軸に連立交渉が進む可能性が出てきた。
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8年ぶりの総選挙は午後5時(日本時間午後7時)に投票が締め切られ、開票が始まった。午後10時の時点で選管は議席の公式集計を発表していないが、地元メディアは貢献党と国民国家の力党が競り、第3党を反軍政の新党・新未来党と中堅政党のタイ名誉党が争っていると報じている。
また選管によると、開票率約90%の段階での得票数は、国民国家の力党が貢献党をリードしている。
今回の選挙は軍主導の政権の継続を目指す親軍政勢力とタクシン派などの反軍政勢力、双方に距離を置く民主党などによる三つどもえの構図だった。クーデターでタクシン派の政権を覆した軍政は「国民和解」を掲げてきたものの、実際にはタクシン派の復権阻止に力を注ぎ、親軍政勢力が自ら政党を設立して反タクシン派の前面に出た。
軍政下で定められた今回の選挙制度は、貢献党などの大政党に不利な仕組みだった。タクシン派は若者に支持を広げる新未来党などあらゆる反軍政政党との連携を模索している。
一方、プラユット氏を首相候補に担ぐ国民国家の力党は、タクシン派の切り崩しに注力してきたほか、反タクシン派の民主党とも議席を奪い合った。地元メディアは民主党が伸び悩み、第5党に沈むと報道。党首のアピシット元首相は24日夜、責任を取って党首を退くと表明した。
総選挙後の首相指名だけを考えれば、軍政が事実上任命する上院の250人が投票に加わるため、親軍政勢力が126議席を取れば上下両院合計の過半数を得られる。だが、下院でも過半数の勢力がなければ、法案審議などで政権運営が行き詰まるのは必至で、親軍政勢力は連立交渉で安定的な状況をつくり出したうえで、プラユット氏を首相に就けたい考えだ。(バンコク=貝瀬秋彦、染田屋竜太)