ニュージーランド南部クライストチャーチの銃乱射事件で、事件の現場となった二つのイスラム教礼拝所(モスク)が23日、捜査や警備のために管理してきた警察から、信徒らに引き渡された。そのうち一つのモスクは同日、再開して遺族らが訪れた。
再開されたのは、犠牲者50人のうち42人が集中した最初の襲撃現場のヌールモスク。混乱を避けるため、信徒ら15人ほどのグループをつくり、遺族を優先しながら、順番に5分間ずつ中に入る形で開放した。
ソマリア出身のアダン・イブラヒムさん(60)は事件当時、ともにモスクにいた息子のムカードちゃん(3)を亡くした。ムカードちゃんは犠牲者で最年少だった。イブラヒムさんは「息子は失ったが、モスクに来て私は気持ちがより強くなった。凶悪な犯行に屈しないために、世界中が団結しなければならないと思う」と気丈に語った。
ラジオニュージーランド(電子版)によると、モスクの内部は新しいじゅうたんが敷かれ、壁などのペンキが塗り直されるなど、事件の痕跡は完全に取り除かれたという。(クライストチャーチ=小暮哲夫)