韓国統一省は22日、軍事境界線近くの北朝鮮側、開城にある南北連絡事務所から、北朝鮮が撤収したと明らかにした。2月末のハノイでの米朝首脳会談で成果を得られなかった不満から、韓国側に圧力をかけ、状況を動かそうとの思惑があるとみられる。
同省によると、北朝鮮側は22日午前、「上部の指示に従って撤収する」と伝えてきた。記者会見した統一省次官は「決定を遺憾に思う。南北間の合意通りに正常運営されることを望む」と述べた。
連絡事務所は、文在寅(ムンジェイン)大統領と金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が昨年4月、板門店での首脳会談で設置に合意。閉鎖している開城工業団地内に昨年9月、開所した。南北の当局者が常駐し、南北それぞれの次官級が務める所長が週1回、定例会議を行っていた。「24時間、365日の意思疎通ができるようなった」と韓国側は評価していた。
ただ、北朝鮮に対する経済制裁が維持され、南北経済協力も本格的に動きださないなか、定例会議は2月22日を最後に開かれていなかった。韓国側は残留し、通常業務を続ける。(ソウル=武田肇)