26日午後0時5分ごろ、東京都杉並区下井草3丁目のアパートから「助けて、という女性の声が聞こえた」と110番通報があった。警視庁によると、2階の一室で住人の保育士照井津久美(つぐみ)さん(32)が左肩に刃物が刺さった状態で倒れており、搬送先で死亡が確認された。現場から黒っぽいコート姿の男が立ち去る姿が目撃されており、警視庁は何らかの事情を知っているとみて行方を追うとともに、殺人事件として荻窪署に捜査本部を設置した。
捜査1課などによると、現場アパートと同じ建物に住むオーナーの男性(71)が叫び声や争うような声を聞いて外に出て、近くにいた郵便局員を通じて110番通報した。照井さんはベランダから身を乗り出すように助けを求めていたという。
通報直後、男性はアパートから北の方向に立ち去る黒っぽいコート姿の不審な男を目撃しており、同課が行方を捜査している。男は30~35歳くらいで、身長160~165センチという。
照井さんは室内のベランダ手前の床の上に仰向けで倒れていた。左肩に刺さっていたのは包丁のような刃物で、他に目立った外傷はなかった。ベランダ側の窓の鍵付近のガラスが割れており、同課は、犯人がここから侵入した可能性があるとみている。室内には争ったような跡があった。
照井さんは26日午前中は勤務先に出勤。帰宅途中に飲食店に立ち寄り食事をしていたことが確認されている。現場の状況などから、照井さんは帰宅直後に襲われた可能性があるとみている。これまでにストーカーなどについて警視庁へ相談した記録はないという。
現場アパートは2階建てで、1階と2階にそれぞれ1部屋タイプの間取りの部屋が四つずつある。警察官が駆けつけた際、照井さんの部屋の玄関は施錠されていなかったという。
現場は西武新宿線下井草駅の南西約550メートルの住宅街。
オーナーの男性は朝日新聞の取材に応じ、「女性の叫び声を聞いた」と証言した。当時男性は携帯電話を持っておらず、居合わせた郵便局員に110番通報を依頼。照井さんは現場の部屋のベランダにいたが自力で室内に戻ったという。その後黒い服装の男が歩いて立ち去るのを目撃した。数分後に到着した警察官を部屋まで案内したという。