2016年12月、タクシーが福岡市博多区の原三信病院に突っ込み、3人が死亡、7人が重軽傷を負った事故で、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死傷)罪に問われた元タクシー運転手の松岡龍生(たつお)被告(66)の判決が27日、福岡地裁であった。平塚浩司裁判長は、禁錮5年6カ月(求刑禁錮7年)を言い渡した。
タクシー10人死傷事故、元運転手に禁錮5年6カ月判決
事故で亡くなった遠藤一行さん(当時53)の父行則さん(79)=静岡県=が、朝日新聞に手記を寄せた。一人息子の命を突然奪われた悲しみや、謝罪がない被告への憤りなどをつづっている。
「一行の死を知り、毎日毎日寂しい日々を送っている生活です。(事故から)2年半もの長期になっているが、加害者からは一度も私たちにわびの言葉すらないのです」
行則さんは30年近くタクシーやバスの運転手をしていたという。一行さんの命を奪ったのは、同じ仕事に就いていた被告だった。
「プロの運転手として、人の大切な命を守りながら運賃をとっている職業についている者として失格ではないですか。殺された一行の無念さを考えると、私は一日たりと忘れたことはないのです」
裁判で被告に直接、息子を失った思いを伝えたいと願ったが、体調が悪いためにかなわなかったという。
「人生100年と言われている今日です。一行は人生途中で命を取られてしまい、さぞ悔しく思っているでしょう。私も80の歳(とし)を迎え、残りあと何年生きていけるかわからないですが、裁判が終わるまではどうしても生きて、一行への気持ちを報告してやりたい」
この日の判決で被告に禁錮5年6カ月が言い渡された。平塚浩司裁判長は「過失は重大。職業運転手として慎重さに欠ける運転で、過失運転致死傷の中でも特に重い」と量刑理由を述べた。
「刑に素直に従って反省の日々を送ってくれることを望みます。死んだ者はいくら考えても戻ってこないのです。加害者を許すわけにはいきません。被害者の全員に心より謝罪をしてくれることを望みます」(島崎周)