(28日、選抜高校野球 習志野3-1星稜)
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いやな予感がしていた。九回1死、習志野・兼子への直球が高めに浮く。星稜の奥川が「失投」と振り返った145キロは左翼席へ。決定的な3点目。奥川は帽子を脱ぎ、野手にわびるようにそれを振った。
体が重かった。直球はシュート回転して浮き、150キロに届かない。変化球もコースに決まらない。1回戦の履正社戦で見せた快投ぶりは、なりを潜めた。「初戦で力のあるチームと当たって勝ち、気持ちの持っていき方も難しかった」
そんな右腕に、習志野打線は低めのスライダーは徹底して捨て、振り負けないようにバットを短く持って向かってきた。同点打を打った竹縄は、短く持ったバットを打席でさらに短く握り直し、数少ない失投に食らいついた。
三回以降、星稜は追加点が奪えず、我慢が続く。「自分が折れたら終わり」と奥川は努めて笑った。だが、小学4年からバッテリーを組む捕手の山瀬は、奥川の焦りに気づいていた。「相手を気にしすぎ、(自分も)打者との勝負に集中できなかった」
焦燥感は、バッテリーだけが感じていたわけではない。四回はバント処理で、一塁手のベースカバーが遅れた。攻撃でも、八回の同点機で二塁走者が牽制(けんせい)死と負の連鎖を止められない。習志野にだめ押し弾を浴びたのは直後だった。
奥川は、頭を整理するように試合を振り返った。「対応ができなかった。幅のある選手になって、ここに戻ってきたい」。優勝候補として臨んだ春。力を出し切れずに終わった悔しさを胸に刻んだ。(高岡佐也子)