日本人の「コメ離れ」が叫ばれるなか、電子レンジなどで温めればすぐに食べられる「パックご飯」の生産は右肩上がりで伸び続けている。なぜだろうか。
知っとこ!DATA 数字からトレンドを読み解く
国内の1人あたりのコメの年間消費量は、この20年間で2割以上減った。しかし、パックご飯の生産量は2018年に約20万トンと過去最高を記録。00年と比べると、2・5倍の水準だ。原料米の値段が上がって17年秋以降、メーカーが次々と値上げしても勢いは衰えていない。
パックご飯の大半を占めるのが、米を殺菌してから炊飯する「無菌包装米飯」。1988年発売の佐藤食品工業(新潟市)の「サトウのごはん」が先駆けで、それまでのレトルト米飯の水っぽさを解消して人気に火が付いた。
消費がさらに伸びたのは東日本大震災のあった2011年以降。一般的に半年以上は食べられる保存食で、万一に備えて買い置く人が増えた。高齢や一人暮らしの世帯が増えるとともに、「炊飯器で炊くよりも楽」と日常的に買う人も今では珍しくなくなった。
近年は商品の種類もふえ、北海道産の「ゆめぴりか」などのブランド米を使ったものなどもある。テーブルマーク(東京都中央区)が昨年9月に発売した「わたしの一膳ごはん」は働く女性を意識。一食150グラムと控えめにし、オフィスでの昼食に持って行きやすいよう、カラフルなデザインのパッケージにしている。
コンビニも扱うようになっており、ローソンは11年秋から自社ブランドの商品を販売。40代を中心とした層が「レトルト食品やカット野菜などと一緒に買っていく」という。
テーブルマークが昨夏に新ラインを稼働させるなど増産の動きも活発。佐藤食品も新潟県に新工場を建設中で1日あたりの生産能力を約103万食にする予定だ。(久保田侑暉)
サトウのごはん
佐藤食品工業の「サトウのごはん」シリーズはパックご飯の代名詞的な存在で、現在は計22種類を販売している。「新潟県産新之助」は新潟県が最近開発した大粒のブランド米を使い、高齢者や女性に合わせて少なめの150グラム入りにしている。(知っとこ!DATA)