(3日、選抜高校野球 東邦6―0習志野)
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東邦のアルプス席では、30年前の優勝時に部員だった2人が息子や後輩を見守り、声援を送った。
1人は、主将でエースの石川昂弥(たかや)君(3年)の父尋貴さん(47)。捕手だった高校時代の選抜大会は、アルプス席で仲間を応援していた。五回、昂弥君がこの日2本目の本塁打を放つと、尋貴さんの目にうっすらと涙がにじむ。「大舞台に強いのは昔から。でも、これほどとは」
試合前、息子のLINEに「優勝おめでとう」と送った。勝つイメージをつけるための、いつものおまじないだ。「普段はふざけた感じで返信があるのですが、今日は『優勝する』と気合が入った返信だった」と言う。
投打で躍動した昂弥君が試合後の場内インタビューで言ったのは、仲間への感謝の言葉だ。「仲間があってこその野球。私自身がベンチ入りできなかったからこそ、その気持ちがわかる。だから、いつも言い聞かせている。1人では野球はできないと」。たくましく成長した息子を見て、また涙がにじんだ。
その尋貴さんの後ろの席にいたのは、前回優勝時の投手で卒業後はプロ野球中日でも活躍した山田喜久夫さん(47)。山田さんの息子は、グラウンドではなく視線のすぐ先にいた。今春の応援団長を務めた、捕手の斐祐将(ひゅうま)君(3年)だ。
斐祐将君が東邦に入りたいと言ったとき、喜久夫さんは反対した。「全国から上手な子が集まる。ベンチにも入れないぞ」。それでも、斐祐将君の意思は固かった。小さいころから、選抜で優勝した父の姿をビデオで見ていた。「かっこいい」と、父は憧れだった。自分も東邦のユニホームを着て野球をする姿を父に重ね、「どうしても東邦で野球がやりたい」という斐祐将君に、最後は喜久夫さんが折れた。
喜久夫さんは、斐祐将君に「応援でも分析でも戦力にはなれる。試合に出られなくてもチームに必要とされる存在になりなさい」と言ってきた。優勝が決まると、誇らしげに言った。「日本一の応援団長になったな。おめでとう」(佐々木洋輔、上山浩也)