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「応援している野球チームが20年以上、優勝しなくて困っています。どうしたらいいですか」。読者の困りごとや疑問を募って取材をする朝日新聞「#ニュース4U」取材班にツイッターでそんなメッセージが寄せられた。
《詳細版:上》オリックス優勝させてくれ! イチローの陰で響いた叫び
《詳細版:下》優勝遠い「呪い」解けるか オリ担当記者が感じた変化
ツイートの主は熱心なオリックスファンの神戸大大学院の木村幹(かん)教授(52)=朝鮮半島研究=だった。
パ・リーグのオリックスは1995年にリーグ優勝、96年に日本一になった後、優勝していない。プロ野球の12球団では最長だ。昨季のチーム防御率は3・69でリーグ1位。それでも負け越し、4位だった。
木村教授は大阪府東大阪市出身。97年の神戸大着任を機に応援を始めた。年間15試合ほどを球場で観戦し、キャンプ地にも通う。勝てない一因に木村教授は2004年の近鉄との統合を挙げる。「優勝時はイチローと田口壮がいて、スマートで洗練されたイメージがあった。近鉄は『いてまえ打線』でいかにも大阪というチームだった。今は『カラー』がない」
「野球の神様怒らせた」
94~95年にオリックスの私設応援団長を務めた小沢直子さん(43)に聞いた。「せこい手でいい選手を確保し、残った人を楽天に出した。あのやり方が野球の神様を怒らせたと思う。優勝できないのは『合併の呪い』だ」と手厳しい。
次に優勝から遠ざかっている球団はセ・リーグのDeNA。大ファンという大手製薬会社「アステラス製薬」(東京)の畑中好彦会長(61)を訪ねてみた。「細かいことを気にせずにガンガン振る。98年に優勝したときも『送りバントはしない』と明確だった。その後は『カラー』が行ったり来たりしたような気がする」
同社は05年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して発足。その後業績を伸ばし、成功したといわれる。一般用医薬品の事業をやめ、医療用に特化する経営判断が大きかったという。「リーダーが方向性をしっかり示すことが重要」と畑中会長は話した。
オリックスは優勝時の「がんばろう神戸」の印象が強いが、今の本拠地は京セラドーム大阪だ。05年にパ・リーグで3位だったオリックスの入場者数は、昨年、最下位に沈んでいる。
湊通夫・球団社長(56)は「ファンクラブの会員数は増え続けている」と強調。「コアなファンは増えている。ドームを自軍のファンでいっぱいにしたい。そうすれば選手も緊張感を持って、良いプレーをしてくれると思う」
若返り、打開のカギに?
今季、オリックスは一気に若返った。先発に転向した3年目の山本由伸(20)らがその象徴。侍ジャパン日本代表にも初選出された。大学日本代表で4番を務めたドラフト2位の新人、頓宮(とんぐう)裕真(亜大=22)や高知・明徳義塾高出身で2年目の西浦颯大(はやと)(19)らも元気だ。一方、先発投手陣を担った金子弌大(ちひろ)(35)、西勇輝(28)が移籍。主軸だった小谷野(こやの)栄一(38)は引退し、中島宏之(36)が巨人へ行った。
パ・リーグでAクラス常連のソフトバンクで、05年から14年に取締役として編成や育成などを担当した小林至(いたる)・江戸川大教授(51)は「ソフトバンクの11年と14年の日本一を比べると、投手で1人、野手で3人しかレギュラーが残っていなかった。多くの選手をとって、競争させる。これが大事だ」と小林さんは話す。
「若手同士の競争」を今季からオリックスの指揮を執る西村徳文(のりふみ)監督(59)も意識している。「競争ですよね、やっぱり。競争で勝った人間は気持ち的にも強くなる」。春季キャンプ3日目の朝、選手たちにこう告げた。「チャンスをつかみ取ろうとしているのかどうか伝わってこない」。ゲキの効果か、かけ声が球場に響くようになった。
現役時代に4年連続で盗塁王を獲得した西村監督は、昨季低かった出塁率と盗塁にこだわる。「打つだけのチームは長続きしない。機動力を使って相手にプレッシャーをかける野球なら、継続してチーム作りができる。大ざっぱな野球はしたくない」
今季は開幕から4敗2分けで12球団で唯一勝ち星がない。ただ、スコアを見直すと、1、2番が6試合で計19安打、5盗塁とかき回している。入団2年目で主将に抜擢(ばってき)された1番の福田周平(26)はこう話す。「やることはやっている。この形を崩さず、チャレンジャー精神でやればいい」
この積極性が結果につながれば、その先に優勝が待っている、かもしれない。(大坂尚子、高橋大作、左古将規)
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