韓国による水産物の全面禁輸を事実上容認した世界貿易機関(WTO)の判断をめぐり、日本政府が第一審の報告書に記載のない「科学的に安全」を根拠に正当性を説明していることについて、菅義偉官房長官は23日午前の記者会見で、「日本産の食品中の放射性セシウムの濃度が、日本および韓国の基準値を下回ることを第一審は認めている。上級委員会はこの事実認定を取り消していない。これを簡潔にお伝えしたということだ」と説明した。
WTO判決「日本産食品は安全」の記載なし 政府と乖離
紛争を処理する上級委員会は11日に韓国の禁輸を「不当な差別」とした第一審・小委員会の判断を破棄する報告書を出し、事実上、日本の逆転敗訴となった。菅氏は第一審の判断を根拠に「日本産食品の科学的安全性は認められた」と主張しているが、第一審の報告書にそうした記載はなかった。
外務省幹部は「上級審では言及していない。言及しないということは(第一審を)踏襲したという解釈だ」と日本政府の立場を説明。菅氏は会見で、こうした政府の説明について「自然な解釈だと思っている」との見解を示した。
また、吉川貴盛農林水産相も23日の閣議後会見で「(第一審の)報告書での日本産食品の安全に関する事実認定は、上級委員会の報告書とともに採択されると認識している」と菅氏と同様の説明を繰り返した上で、韓国側との二国間協議を通じて、引き続き禁輸措置の撤廃を求めていく考えを示した。
この紛争は、韓国が2013年、事故を起こした福島第一原発から汚染水が流出しているとして、福島など8県の水産物の禁輸対象を一部から全面に拡大したことに対し、日本がWTO協定に違反しているとして提訴した。