「開かずの『救済への扉』が開いた」。旧優生保護法による不妊手術問題で、被害弁護団は救済法の成立と安倍晋三首相の「おわび」談話に一定の評価を示した。ただ、いずれも被害者が求めてきた違憲性を認めた上での謝罪ではなかった。一時金支給をめぐる懸念も根強い。
強制不妊救済法、首相が「おわび」談話 国の責任触れず
救済法成立から約1時間後、政府は欧州訪問中の安倍首相の談話を書面で発表した。「政府としても、旧優生保護法を執行していた立場から、真摯(しんし)に反省し、心から深くおわび申し上げます」。政府関係者は「救済法をなぞっただけ」と認める。
救済法前文で、おわびの主体は「我々は、それぞれの立場において」とあいまいになっている。衆院厚生労働委員会での法案の趣旨説明で、冨岡勉委員長は「旧優生保護法を制定した国会や執行した政府を特に念頭に置くもの」と述べた。各地で続く国家賠償請求訴訟の判決が示されない段階で、首相の「おわび」談話発表に踏み切ったのは、「我々」に政府が含まれているとされたからだった。
ただ、談話は、前文と同様に旧法の違憲性や救済策を講じなかった国の責任には一切触れていない。訴訟への影響は避けたいとの思惑がのぞく。
首相周辺は「首相の外遊中に出される談話で、あまり意味はない。法律作成にも首相官邸は関与していない」と逃げ腰だ。首相が自ら談話を読み上げ、説明することもなかった。
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