日本銀行は25日の金融政策決定会合で、今の大規模な緩和策を「少なくとも2020年春ごろ」まで続ける方針を表明した。第一生命経済研究所の熊野英生氏とニッセイ基礎研究所の上野剛志氏に受け止めを聞いた。
熊野英生氏「緩和方向に流されている」
日本銀行が昨年7月に導入したフォワードガイダンス(先行きの指針)は、消費増税(の影響)への配慮という側面があった。米中貿易摩擦の激化など世界経済の不透明さが増すなかで、日銀として(金融緩和を続けるという)「コミットメント(約束)」をより強化する必要を感じたのだろう。
ただ、今回見直されたフォワードガイダンスでは、今の極めて低い金利を維持する期間について「当分の間」と「少なくとも2020年春ごろまで」が併記され、わかりにくいところがある。20年春以降も続く可能性があるが、明確な期限を設けなかった。
以前は日銀が金融緩和縮小に向かうとの観測が(市場の)一部にはあった。ただ、欧州中央銀行(ECB)が年内の利上げを断念したのと同じく、今回のフォワードガイダンスによって日銀は金融引き締めを封印せざるを得なくなった。(日銀の政策が)緩和の方向に流されていっているという印象だ。(聞き手・柴田秀並)
上野剛志氏「指針見直し効果薄い」
日銀がフォワードガイダンス(先行きの指針)を見直し、現在の極めて低い金利水準を維持する期間を「少なくとも2020年春ごろまで」とした。それは、米連邦準備制度理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など、(金融緩和に向かう)「ハト派」色を打ち出した中央銀行に足並みをそろえるためだ。
同時に発表した21年度の物価上昇率の見通しは1・6%。(日銀が目標とする)2%を達成する見通しは低い。何も手を打たないと日銀の信認が低下するおそれがあったが、金融緩和の余地は乏しい。残された手が、フォワードガイダンスの見直しだった。
現在の低金利を維持する期間を「20年いっぱいまで」としていれば、市場にサプライズをもたらしただろうが、(低金利で収益が悪化する)金融機関への悪影響も無視できなくなる。
各国の中央銀行との足並み、市場への働きかけ、金融機関への配慮という、三つの線が交わったところが「20年春ごろまで」という時期になったのだろう。ただ、これまでのフォワードガイダンスも消費税引き上げの影響を踏まえる、とああったので、20年春までの金利の据え置きは十分予想ができた。見直しの効果は薄いだろう。(聞き手・新宅あゆみ)