リビアの最高指導者だった故カダフィ氏のいとこアフマド・カダフダム氏(66)が朝日新聞の単独インタビューに応じ、武装組織「リビア国民軍(LNA)」の動きについて「祖国を守るために必要な戦いだ」と支持を表明し、その狙いなどを語った。
カダフダム氏は、「(LNAの進軍は)首都から武装マフィアやイスラム過激派を掃討するのが狙いだ。政府を樹立することではない」と述べた。LNAについては「11年にNATO軍と戦った正規軍が中心で、単なる民兵組織とは異なる」とした。
カダフダム氏は旧リビア軍将校、故カダフィ氏の特使などを歴任。「アラブの春」を受けてエジプトに逃れ、現在もカイロに滞在する。リビアの再生をめざす政治組織を率いており、LNAやエジプト政府とも関係が深いとされる。
カダフダム氏は、「暫定政府は(旧宗主国)イタリアの影響下にあり正統性がない。LNAの作戦後、選挙をするか統一政府を樹立するかはリビア国民が決めればいい」と主張。自身の将来の役割については「どんな高官職に就きたいとも思わない」と述べた。(カイロ=北川学)
武力衝突、死者400人
東西に分裂して混乱が続く北アフリカのリビアで、武装組織が首都トリポリ制圧を目指して進軍してから4日で1カ月となった。暫定政府との武力衝突による死者は400人に迫る。暫定政府は徹底抗戦の構えで、早期の事態収拾は見通せない。
世界保健機関(WHO)リビア事務所は2日、一連の衝突で392人が死亡、1936人が負傷したと明らかにした。また国連人道問題調整事務所(OCHA)は3日、民間人の死傷者が102人で、うち死者が23人と発表した。
衝突は、東部を拠点とする武装組織「リビア国民軍(LNA)」が4月4日、西部にある首都への進軍を開始したことが契機となった。これに対し、暫定政府は同24日、首都の南郊約60キロの町アジジヤからLNAを撃退したと発表。「LNAが敗北するまで停戦はない」としている。
衝突を巡っては、中東の対立構造が持ち込まれ、各国で対応が分かれていることも混乱に拍車をかけている。イスラム組織・ムスリム同胞団を「テロ組織」とみなすエジプト、アラブ首長国連邦、サウジアラビアがLNAを支持。トランプ米大統領も支持を表明した。一方、カタール、トルコは暫定政府を支援しているとされる。
リビアでは、2011年の「アラブの春」による大規模デモが内戦に発展。北大西洋条約機構(NATO)も空爆で介入し、カダフィ政権が崩壊した。その後、14年の暫定議会選をめぐって東西に政府、議会が並立する事態となった。国連の仲介で統一政府の樹立が合意され、16年に首都に暫定政府ができたが、東部で招集された暫定議会は認めていない。