イスラエルとパレスチナの中東和平を巡って、トランプ政権は21日までに和平案を6月上旬以降に提示する意向を示した。アラブ連盟(21カ国・1機構)は同日、緊急外相会合で米国の姿勢に反対を打ち出した。イスラエルも強硬姿勢を崩しておらず、妥協点は見いだせない。
ロイター通信によると、中東和平を担当するクシュナー大統領上級顧問が今月中旬、ワシントンでの各国大使に向けた講演で和平案について説明し、「双方に譲歩を求めるが、イスラエルの安全保障を脅かすことはない」と語った。その上で、イスラエルの新政権が発足し、イスラム教のラマダン(断食月)が終わる6月上旬以降に和平案を公表する意向だとした。
トランプ氏は就任以来、中東和平を「究極の取引」として、仲介に強い意欲を示してきた。だが、聖地エルサレムをイスラエルの首都と宣言したほか、パレスチナ側への支援を相次いで凍結するなど、親イスラエル姿勢を鮮明にしている。 また、歴代米政権や国際社会はこれまで、パレスチナ国家樹立による「2国家共存」を唯一の解決策としてきた。だが、米メディアによると、今回の和平案ではこの基本原則を求めない可能性もあるという。
和平案の詳細は不明だが、当事者間では互いを牽制(けんせい)する動きが強まっている。パレスチナ自治政府のアッバス議長は21日、カイロでアラブ連盟の緊急外相会合を招集し、「米国の支持をいいことに、イスラエルは何の合意も守らない。米国の仲介でどう解決にたどり着けるのか」と非難。アラブ連盟も「パレスチナ人の正当な権利を満たさない和平案は、中東に平和をもたらさない」との声明を出した。ただ、一部のアラブ諸国は米国やイスラエルとも近い関係にあり、一枚岩でいられるかは不透明との見方もある。
パレスチナ側は、トランプ氏が2017年末にエルサレムをイスラエルの首都と認定して以降、米国仲介の和平交渉への拒否を貫いている。こうした姿勢に、米政権のグリーンブラット外交交渉特別代表は17日、「拒絶する前に、まず機会に目を向けるべきだ」などとツイートし、いら立ちを隠さない。
一方、イスラエルのネタニヤフ首相は今月、パレスチナからユダヤ人入植者を一切撤退させないなどの意向をトランプ政権に伝えたとされる。パレスチナ側の主張と真っ向から反しており、落としどころは見えない。
ネタニヤフ首相は5期目の新政権で、パレスチナ自治区のヨルダン川西岸にあるユダヤ人入植地を併合する考えを示した。和平案が、国際法違反として非難される入植地の問題にどう言及するかも焦点だ。(ワシントン=渡辺丘、カイロ=高野遼)