ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の首席奏者ら欧州の一流音楽家が集まるオーケストラ「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」(略称・トーマス)が結成20年目を迎えた。企業が文化芸術を支援するメセナ活動として、トヨタ自動車が日本の各地でコンサートを主催。国内の音楽家からも高い評価を得ている。
トーマスは2000年に結成された。当時、トヨタの国内累計生産台数が1億台を超えたことなどをきっかけに、一流のクラシック音楽を通じた社会貢献活動を模索。同じ頃に高級車ブランド「レクサス」が初のスポンサーとなった縁で、ウィーン国立歌劇場のメンバーを中心に演奏会が開かれることになった。
演奏者は同歌劇場のほか、ウィーン・フィルやベルリン・フィルハーモニー管弦楽団などの首席奏者ら約30人。小編成を生かして、指揮者を置かずに演奏する。ウィーン・フィルのコンサートマスターでトーマスの芸術監督を務めるフォルクハルト・シュトイデさんは「音楽がグローバル化するなかで、ウィーンならではの解釈を伝えられるよう心がけている」。
今年は4月16日の札幌公演を皮切りに、福岡や宮城など6都道府県8会場をまわった。4月23日の名古屋公演では、名古屋フィルハーモニー交響楽団(名フィル)のメンバーも参加。特別に、ウィーンを拠点に活動する佐渡裕さんが指揮し、リヒャルト・シュトラウスの大曲「アルプス交響曲」を演奏した。
シュトイデさんの隣で演奏した名フィルのコンサートマスター田野倉雅秋さんは「普通はウィーン・フィルに入らないと一緒に弾けない。(名古屋フィルの)若い人も一緒に弾ける。ありえないことだ」。名フィルの共演は00年から毎回続き、個人的な交流を続けるメンバーもいる。
企業によるクラシックコンサートの支援はなかなか根付きにくい。1回の公演の来場者は多くても2千人弱で、数万人を動員するスポーツなどと比べて宣伝効果が少ないためだ。佐渡さんは「オーケストラは自分たちでチケットを売るだけでは成り立たない。日本を代表する企業が支援してくれるのは、ありがたい」と話す。(初見翔)