東京医科大の不正入試問題をめぐり、同大が不正に不合格とした受験生らに対し、補償金額の提示を始めていることが関係者の話でわかった。額は1人あたり10万~600万円とみられ、受験生らからは「不合格になったことでかかった費用を考えると、あまりに安い」と声が上がっている。
「東京医大等差別入試被害弁護団」などによると、大学側は10日付で補償についての文書を郵送。17、18年度入試で不正に不合格となり、不正発覚後の18年秋に再判定で追加合格となった受験生のうち、他の医学部に進学した人には1年あたり300万円、予備校に通うなどした人には1年あたり100万円を支払う内容。一方、再判定後も同大への入学を希望しなかった人は「入学していただけたか否かについて確認することができなかった」として、10万円にとどめた。
弁護団によると、受験生の家族は提示額に「ありえない」と反応した。弁護団の一人は「他大学の学費や、東京医科大への入学費用などを考えると、実費ですらない。あまりに安すぎる」と憤る。大学は受験生に、補償の受け取りを希望する際の同意書を送っており、「この他に、大学との間に何らの債権債務がないことを確認します」という一文を記した。これ以上の補償は求めない「清算条項」にあたり、弁護士は「被害者に説明不足だ」と、注意を促している。
第三者委員会の報告書などによると、同大は2006年度入試から女子や浪人年数の長い受験生が不利になる得点操作をしていた。大学側は17、18年度入試については合否の再判定をし、結果、計101人が不正に不合格になっていたと判断。入学希望の49人のうち、44人の追加合格を認めた一方、5人は定員を理由に再び不合格とした。
同大は、補償内容を示した案内を郵送したと認めたうえで「内容や範囲については公表を控える」とコメントした。(山下知子、貞国聖子)