高野山のふもとにある山里に、虐待などを受けて親とは暮らせない子どもたちの「駆け込み寺」がある。住職夫婦が「ファミリーホーム」(小規模住居型児童養育事業)を営み、里親としてこれまで約20人の里子を受け入れてきた。子どもへの虐待が社会問題化する中、住職夫婦は、「子どもたちを迎え入れて向き合い、社会に羽ばたけるよう見守り続けたい」と話す。
山々に囲まれたかつらぎ町新城の「童楽寺」。平日の早朝6時半、お堂に子どもたち5人ほどが横一列に並び、朝の勤行が始まる。住職の安武隆信さん(43)の読経に重なるように子どもたちの声がお堂全体に響きわたる。隆信さんは「勤行がお寺ならではの一日の始まり。みんなで気持ちよく顔を合わせることを大切にしています」と話す。
ファミリーホームは、2009年度に創設された制度で、様々な事情で家庭環境を失った子どもたち5~6人を里親らが家庭に迎え入れて育てる。厚生労働省によると、17年3月末時点で全国で313カ所あり、童楽寺では、隆信さんと妻の史さん(44)が営む。
隆信さんは、高野山での修行の…