令和最初の大相撲夏場所(東京・国技館)で、平成や昭和を彩った横綱の孫やおいっ子たちが、関取の座をかけてしのぎを削っている。
筆頭格は、東幕下2枚目の琴鎌谷(ことかまたに)(21)=佐渡ケ嶽部屋。母方の祖父は、その激しいぶちかましから「猛牛」と呼ばれた元横綱琴桜。父は師匠でもある佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)で、血統には文句のつけようがない「サラブレッド」だ。
もう一人の注目は西幕下4枚目、モンゴル出身の豊昇龍(ほうしょうりゅう)(19)=立浪部屋=だ。モンゴル勢で初めて横綱に登り詰めた朝青龍をおじにもつ。
琴鎌谷は中高時代を強豪・埼玉栄で過ごし、世界ジュニア選手権優勝、高校総体団体優勝などアマ相撲のエリート街道を走った。豊昇龍はレスリングを学びに千葉・日体大柏高へ留学したが、その後相撲に転向。頭角をすぐに現し、国体3位の実績を残してプロの道へ進んだ。
初土俵が2年早い琴鎌谷は、幕下で一時停滞したが直近2場所は5勝2敗で勝ち越し。豊昇龍は、幕下昇進後の4場所を含めて一度も負け越しがない。2人は東西計120人いる幕下で番付上位に駆け上がり、十両昇進を狙える位置にいる。
16日、5日目の3番相撲で相まみえた。互いに2勝0敗で迎えた一番。琴鎌谷がのどわで押し込むと、豊昇龍はすかさず手繰って体勢を入れ替える。しかし、最後は強引に投げを打とうとした豊昇龍を、琴鎌谷が寄り倒した。スター候補同士の熱戦に、国技館は大きな拍手で包まれた。
「投げてきても対応できた。体がしっかり反応してくれた」と振り返った琴鎌谷は、十両へまた一歩前進。現役時代に朝青龍と何度も対戦した父からは「土俵に上がったら相手を吹き飛ばすくらいのつもりでいけ」と発破をかけられていたという。
敗れた豊昇龍は悔しさを隠さず「体の動きは悪くなかったけど、相手のことを考え過ぎちゃったかな……」。囲む記者たちの質問をみずから打ち切り、支度部屋へと戻る姿は、幕下力士のそれとは思えぬ堂々としたものだった。
幕下にはほかに、幕内優勝32回を誇る元横綱大鵬の孫、納谷(なや)(19)=大嶽部屋=がいる。春場所は東の51枚目で6勝1敗の好成績をあげ、今場所は東の22枚目で3番相撲まで負けなしだ。新大関・貴景勝の付け人も務め、土俵外での経験も積み重ねている。幕下の土俵からも目が離せない。(松本龍三郎)