2020年東京五輪・パラリンピックでサリンなどの化学テロが起きる事態に備え、厚生労働省は現場で活動する消防隊員らが負傷者に解毒剤を注射できるようにする検討を始める。解毒剤の注射は医療行為にあたり、原則医師や看護師しか認められていない。近く検討会を立ち上げ、年内にも方針をまとめる。
化学テロの際に注射器の使用を想定しているのは、汚染現場で活動する消防や警察、自衛隊などの専門部隊。検討会で注射できる条件や対象者などを整理し、素早く治療を始められる体制づくりを進める。
安全に携帯できる自動注射器を使った解毒剤の取り扱いも検討する。国内では、病院の外で使うのに不向きな静脈に注射するタイプの解毒剤しか承認されておらず、自動注射器を使えるための条件を整理する。
化学テロ対策をめぐっては、厚労省の専門部会が5年前に提言を公表。化学物質による急性中毒は、30分から数時間以内に解毒剤治療を始める必要があるとし、薬の備蓄や、負傷者を病院に運ぶ前に早期に治療を始める体制づくりを求めていた。(阿部彰芳)