旧優生保護法で不妊手術を強制された人たちが国を訴えた一連の裁判で、仙台地裁は28日、初めて「法律は違憲」と判断した。自らの意思で子どもを産み、育てることは憲法が保障する権利と認めたが、損害賠償の請求は棄却。政府関係者には静観する見方が広がった。
「山の8合目までいって、下りてきてしまったような印象だ」
判決後の記者会見で、原告側の新里宏二弁護団長は仙台地裁判決をこのように表現した。
「8合目まで」とした理由の一つは、判決が「子どもを産み育てるかどうかを意思決定する権利は、幸福追求権などを規定した憲法13条によって保障される」と判断したためだ。原告側の訴えの根幹部分で、日本の裁判所で明確に認めたのは初めて。判決は、不妊手術を強制した旧優生保護法を明確に「憲法違反」と断じた。
判決や原告側などによると、この権利は「性と生殖に関する権利(リプロダクティブ・ライツ)」と言われる。1994年にカイロで開かれた国連の国際人口・開発会議で提唱され、人々が身体、精神、社会的に健康な状態で、子どもを持つか、持つならば、いつ、何人持つかを自ら決定する権利のことをいう。95年に中国で開かれた世界女性会議でも合意された。
日本は両会議に加わり、障害者への強制不妊の項目を削除する96年の優生保護法改正の契機にもなった。しかし、欧米を中心に、宗教的な理由で避妊や人工妊娠中絶の権利が制限され、訴訟などでも激しく争われてきた状況と異なり、国内では判例が積み重なることはなかった。
この日の仙台地裁判決は性と生殖に関する権利について、「子を産み育てることを希望する人にとって幸福の源泉。人格的生存の根源にかかわるもので、憲法上保障される個人の基本的権利だ」との考えを示した。
その上で、旧優生保護法については「優生上の見地から不良な子孫の出生を防ぐという理由で不妊手術を強制し、子を産み育てる意思を持つ人の幸福の可能性を一方的に奪い去り、個人の尊厳を踏みにじるものだ」と厳しく非難した。(杉原里美、徳島慎也)
訴えを阻んだのは
訴えを8合目で阻んだのは、何だったのか。
不法行為に対する損害賠償の請…