三菱航空機が、国産初のジェット旅客機「MRJ」の開発戦略を見直す。名称を「スペースジェット」に変更。需要の見込める70席規模の小型機の開発を加速させる方針だ。主力機の変更によって投資回収がさらに遅れる懸念もでてきた。
【特集】国産初のジェット旅客機MRJ
MRJ、スペースジェットに名称変更へ 「三菱」外す
同社は2020年代半ばに90席規模の機体を投入し、22年をめどに70席規模の機体を実用化する計画を持っている。ただ、世界最大の航空機市場の米国では、90席規模の機体が航空会社の労使協定によって運航できない状況が続いている。MRJはこれまで90席規模の機体を400機以上受注してきたが、16年夏以降は新規の受注が止まっている。
一方、70席規模の機体は協定に該当せず、競合他社も古いモデルしか用意していない。そのため、三菱航空機は70席規模の機体開発に注力する方針に転換する。航空アナリストの杉浦一機氏は「90席規模の機体だけだと米国の需要を取りこぼすおそれがある。70席規模の機体開発が重要になる」と指摘する。
現在のところ、70席規模の機体は試作機を製造中だ。当初は90席規模の機体を小幅に改良する計画だったが、最新技術も採り入れるなど大規模な手直しも視野に入れる。そうしたこともあって、米国に生産拠点を移すことも検討する。開発戦略の大幅な見直しに伴って、投資回収の遅れを招く可能性がある。三菱航空機は、6月に開かれる世界最大級の航空ショー「パリ航空ショー」に合わせて、これらの計画を公表するとみられる。
MRJは08年に事業化され、6千億円超の開発費が投じられてきた。設計変更などで納入延期を繰り返し、初号機の引き渡し時期は20年半ばを想定している。今年3月からは、国土交通省が安全性を証明する「型式証明」を得るための飛行試験を米国で受けている。(初見翔)