無人運転の新交通システム「シーサイドライン」の新杉田駅(横浜市磯子区)で1日夜、列車が逆走して車止めに衝突し、14人が重軽傷を負った事故で、運営会社の横浜シーサイドラインが2日未明、横浜市内の本社で記者会見した。三上章彦社長は「逆走することは全く想定していなかった。早急に原因究明し、再発防止に努めていきたい」と話した。
神奈川県警によると、事故では乗客14人が負傷し、うち6人が重傷だった。
同社によると、事故が起きた列車は新杉田発並木中央行きで5両編成。1日午後8時15分、車両のドアとホームドアが閉まった直後に、列車が本来とは逆方向に走り始め、26・5メートル離れた車止めにぶつかった。時速10キロ以上出ていた可能性もあるという。事故当時、列車には約50人の乗客が乗っていた。
シーサイドラインは1989年に開業。94年から運転士がいない完全自動運転になった。現在の2000型車両は2010年から4年かけて更新した。三上社長は「開業から30年、今回のような人身事故を起こしたのは初めて。申し訳ない気持ちでいっぱいだ」と陳謝した。
無人運転では、駅と車両双方に設置された自動列車運転装置が運転士の役目を果たす。進行方向は新杉田駅にある「継電連動装置」で切り替える。三上社長は「詳細はわからないが、前に進む信号がうまく作動せずに逆走してしまった。電気系統なのか車両の問題なのか、早急に原因究明したい」と話した。
運行管理は本社5階の司令所で3人態勢で監視していたが、非常の表示に気づいた時には、すでに車止めに衝突していたとみられる。担当者は「電車を止める方法はあるが、逆走するという概念がそもそもなく、この事象は初めてなので止めるのは難しかった」と述べた。
バスで代行輸送
シーサイドラインは2日も始発から運転を見合わせた。運行再開のめどは立っておらず、バスで代行輸送している。午前9時には国の運輸安全委員会の鉄道事故調査官らが新杉田駅に到着し、現場の調査を始めた。
2日朝、新杉田駅前では、係員らが声を上げ、乗客に振り替え乗車券を渡したり、代行バスの乗り場を案内したりした。
駅入り口はシャッターで閉め切られ、「運転を休止しております」の看板が置かれた。事故を知らずに訪れた専門学校生の女性(18)は「普通の人身事故なら1、2時間で復旧するのに」と驚き、スマホで検索しながら代行バス乗り場に向かった。(武井宏之、木下こゆる)